本を枕にうたた寝

スローペースな本読み。本がたくさんある場所に行くと、心が躍ります(´∀`) そんないち本好きが送る汗と涙の読書記録です。

ガイブン日和

母を独占した夜ーー「アルプスのきょうだい」ゼリーナ・ヘンツ著

時として本との出会いは、強烈な印象として一生涯残るものだ。 今回紹介する本は唯一母が読んでくれた記憶の残る絵本。 インドらしき土地を家族で訪れ、見たことのない光景や聞いたことのない音楽が珍しくきょろきょろしていた。 そんななか「うわぁー!」と…

少女の成長をみずみずしく描く――エリコ・ヴェリッシモ 著「遥かなる調べ」

リオ五輪まであと一ヶ月となり、日本でも各競技の代表選手を発表したり、本番に向けて選手インタビューを流すようになった。 じつはこの数年、ボサノヴァを聞くようになり、奇跡の来日と騒がれたジョアン・ジルベルトのライブや、ファベーラの抗争を舞台とし…

暑中御見舞い申し上げます。――「わたしの物語」セサル・アイラ著

毎日、暑い日が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。 暑いとついついクーラーに頼ってしまったり、冷たいものを食べたり飲んだりしてしまいがちですよね。過度に我慢してしまうのはいけませんが、クーラーも冷たいものもほどほどにお願いいたします。か…

小島信夫生誕100年!ーーバーナード・マラマッド著「レンブラントの帽子」

2015年2月28日は、「アメリカンスクール」で芥川賞を受賞した故小島信夫氏の生誕100年である。 本来ならば自身の著書を読むべきだが、時間が取れないことと放置状態である「ガイブン日和」の更新もかねて、読んだバーナード・マラマッド著、小島信…

パリの町並みを闊歩ーーエリック・フォトリノ著「光の子供」

過去に一度だけフランス映画を見に行ったことがあるが、仕事帰りだったせいか睡魔に襲われてしまい、かなり悔しい思いをした。 それ以来、フランス映画・イコール・眠いもの、といったイメージがついてしまった。 だが、カトリーヌ・ドヌーブ主演の「昼顔」…

うつ病をテーマにした児文学ーーマリャーナ・レムケ著「母さんがこわれた夏」

近年うつ病という言葉をよく聞くようになりました。メディアで取り上げられたり、体験談を書いたエッセイが多くの人に読まれ、映画やドラマになっています。しかし、まだ周囲の理解は乏しいように思えます。まして、小学生となるとどうでしょうか。もしお父…

閑話休題1「ルー・サロメ 愛と生涯」 H.F.ペータース 著, 土岐 恒二 訳

きっかけは深夜に放送されていた映画「ルー・サロメ 善悪の彼岸」に由来します。 「愛の嵐」で有名なリリアーナ・カヴァーニ監督がメガホンを撮り、ドミニク・サンダが主役ルー・サロメを演じています。新聞のあらすじでニーチェという文字を見たからかもし…

ROCKなSF――ルイス・シャナー著「グリンプス」

好きな小説は三作品ほどある。映画化されるたびに必ず観に行くシャルロット・ブロンテ著「ジェーン・エア」。故森光子さんや今度仲間由紀恵さんが主役を演じる林芙美子著「放浪記」。そして、今回紹介するルイス・シャナー著、小川隆訳の「グリンプス」(筑…

甘くないロマンス――「罪深き愛のゆくえ」 アナ・キャンベル著

紳士淑女の皆様、ごきげんよう! 私が本を知るきっかけは、些細なことだ。ツイッターを始める以前は、ラジオや新聞から情報を得ていたが、お気に入りの作家や書評家の呟きを時々のぞかせてもらっていた。そんな頃にこっそりのぞいていた某作家の呟きにより、…

グレゴールは哀れな奴か――カフカ著「変身」

先日読んだアン・ビーティ著「燃える家」(「この世界の女たち アン・ビーティ短篇傑作選」より)のなかでカフカの「変身」が出てきた。主人公がゴキブリになったのは「みんなの期待」という会話があり、思わず吹き出してしまったのだが、それははさておき主…

小さな冒険者ーアヴィ著「はじまりのはじまりのはじまりのおわり」

昨夜の激しい雨は止み、路面はその形跡を保っていた。湿り気を帯びたアスファルトを水溜りに注意しながら歩き、住宅街を抜けようとしたその時。私の前をのそのそと動く物体が通り過ぎようとしている。目を凝らして見ると渦巻きの殻を背負った小さな小さなか…

すてきな妄想世界――ジュディ・バドニッツ著「空中スキップ」

ある日、ラジオにお気に入りのバンドが出演すると聞き、早めにスイッチを入れて待機していた。ラジオからはメインであるコーナーが終わり、ニュース、気象情報と流れてくる。いよいよ、あと10分ほどでお目当てのバンドが登場すると私のテンションも上昇し…

はじめに――後悔先に立たず

それはそれは幼い日。アニメとして放映されてた「アルプスの少女ハイジ」、「母を訪ねて三千里」ぐらいは読んだ記憶はある。中学生になり、話題に乗り遅れまいとエンデの「モモ」、「はてしない物語」は読んだ。高校生になり、とりあえずページ数の少ない本…