本を枕にうたた寝

スローペースな本読み。本がたくさんある場所に行くと、心が躍ります(´∀`) そんないち本好きが送る汗と涙の読書記録です。

暑中御見舞い申し上げます。――「わたしの物語」セサル・アイラ著

毎日、暑い日が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。

暑いとついついクーラーに頼ってしまったり、冷たいものを食べたり飲んだりしてしまいがちですよね。
過度に我慢してしまうのはいけませんが、クーラーも冷たいものもほどほどにお願いいたします。
かく言うわたくしめはクーラーのない部屋で、扇風機をかけつつ適度に水分(主に湯冷ましか、麦茶)を飲みながら過ごしております。
室温が三十六度を超えると頭がぼうっとしてしまいますが、なんとか生存しています。

ところで皆様はアイスクリームはお好きでしょうか。
バニラ、抹茶、チョコとさまざまな味がございますが、イチゴが好きな方はいらっしゃいますか。
今回はイチゴのアイスクリームが登場するセサル・アイラ著 柳原孝敦訳「わたしの物語」(松籟社)です。

 

わたしの物語 (創造するラテンアメリカ)


物語の舞台はアルゼンチン。幼い「わたし」の目を通して話が進んでいきます。
主人公は父親と母親の三人でごく普通に暮らしてました。
ある日、わたしはお父さんと一緒に街へ行き、アイスクリームショップでイチゴのアイスを買ってもらいます。
ところがこのアイスの味がおかしい。食べずにじっとしていると、バニラのアイスを食べている父は、
「ほら食べるんだ。うまいぞ」、「さあ食え。冷たくて甘いぞ」と執拗に勧めてきます。
だけどどうしても口にしたくないわたしは、アイスが『どんな拷問器具よりも残酷な装置』に思えてくるぐらい嫌でした。
父親は折角買ってやったのにと強要し、わたしはとうとうすすり泣きながら口にします。
たちまちわたしは吐き気をもよおしてダウン。ようやく様子がおかしくなってしまった我が子からアイスを奪って父親は味見をします。
父親もアイスの味がおかしいことに気付き、即アイスクリーム屋にクレームをつけます。
「そんなはずはない」とアイス屋は父親の抗議をはね付け、味見すらしてくれません。横柄な態度に腹を立てた父親は、イチゴのアイスの入った缶をアイスクリーム屋の頭にすっぽり被せてしまいます。
苦しみ悶えるアイスクリーム屋でしたが、息が途絶えて死亡。
父は敢えなくご用となり、逮捕されてしまいます。
そして、わたしはというと気付くと病院のベッドにおり、あのアイスのせいで食性青酸中毒にかかっていました。父親は禁固八年の刑に処せられます。

退院をしたわたしは、母親と一緒に父の帰りを待ちます。
この主人公であるわたしという人物はとても奇妙な性格。しかし、独特の世界観を持っており、幼いながらきちんとしたポリシーを持っています。
世間から閉鎖されたように暮らしているため、当然友達は少なくわたしのなかで様々な一人遊びを発明していきます。
例えば「尾行ごっこ」。ただ単に買い物に行く母親の後をつけるだけですが、世間というものが見えていきます。
やがて学校へ通うようになり、とても物静かな男の子と初めて友達になります。
しかしそれも束の間。男の子は大きな街へと引っ越して行ってしまいました。
そして、ある日。知らないおばさんに声をかけられてしまい……。

この小説を読み終えたあと、しばらくイチゴのアイスは……、いやむしろ食べたくなってしまいました。
ただし、ガッツいて食べてはいけないことを学びました。
もしかしたら、アイスを食べるよりもひんやりする方もいらっしゃるかもしれません。
ふふふ……。