本を枕にうたた寝

スローペースな本読み。本がたくさんある場所に行くと、心が躍ります(´∀`) そんないち本好きが送る汗と涙の読書記録です。

甘くないロマンス――「罪深き愛のゆくえ」 アナ・キャンベル著

紳士淑女の皆様、ごきげんよう!

私が本を知るきっかけは、些細なことだ。
ツイッターを始める以前は、ラジオや新聞から情報を得ていたが、お気に入りの作家や書評家の呟きを時々のぞかせてもらっていた。
そんな頃にこっそりのぞいていた某作家の呟きにより、今まで読んだことのないロマンス小説に手を出した。
作家はオーストラリア生まれ、アボガド農家育ちのアナ・キャンベルで、翻訳は森嶋マリ。
タイトルは「罪深き愛のゆくえ」(二見書房)だ。

罪深き愛のゆくえ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)


普通ロマンス小説というと、皆様はどんなイメージをお持ちだろうか。
誇張表現、とことん甘い恋愛、男女の絡み・・・、といったあたりだろうか。
じつは私もそのようなイメージを持っていた。
ところがこちらの作品シリーズは、「二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション」とあってとことんダーク。
固定概念を払拭させられた作風だった。

ロンドン社交界をにぎわせている高級娼婦ソレイヤは、魔性の女と囁かれていた。
そんな彼女を執念で六年かけて口説き落とし、念願かなって愛人とした男カイルモア公爵。
二人の間で一年契約の愛人関係を結ぶが、もうすぐ契約が切れるという時期にソレイヤは姿を消す。
じつはソレイヤいやヴェリティには生き分かれた弟がおり、一緒に暮らすために娼婦となったのだった。
ようやく片田舎で弟との生活を始め、穏やかに日々を過ごしていた。
ところが六年かけて口説き落としたソレイヤを簡単にはあきらめきれずカイルモア公爵は手を尽くして捜し出す。
ヴェリティはカイルモア公爵に拘束されるような形で屋敷へと向かう。
その道中、逃げたいと思うヴェリティと自分の思うようにしたいカイルモア公爵との駆け引きの心理描写がじつに見事。
はらはら感が味わえる。
やがて屋敷に到着したヴェリティは一室に押し込められ、軟禁状態になってしまう。
しかし、同じ屋根の下にいる男女。
枕をともにしていくうちに、冷酷だと思われていたカイルモア公爵は次第に心を開いていく。

男女の視点が交互に描かれ、その心理描写が巧妙で引きこまれる。
一度読み出したら、ページをめくる指が止まらず引き込まれた。
物語の流れは、序盤ドロドロ、中盤ドキドキ、終盤ハラハラだったが、最後はすきっと爽快だった。
また、アナ・キャンベルは歴史、特に司法史を学んでおり、当時のイギリスがよくわかる。
ヒーロー、ヒロインの根底設定がしっかりしており、この二人の結びつきに納得ができた。
トータル547ページと長編ではあるが、ヒストリカル・ロマンスに皆様、心をときめかせてはいかがだろうか。
余談だが、二作目「囚われの愛ゆえに」、三作目「その心にふれたくて」はすべて監禁物である。
その後、刊行された「誘惑は愛のために」は、このカイルモアとヴェリティが登場し、いろどりを添えています。

それでは紳士淑女の皆様、ごめんあそばせませ。

 

二三歩拝