本を枕にうたた寝

スローペースな本読み。本がたくさんある場所に行くと、心が躍ります(´∀`) そんないち本好きが送る汗と涙の読書記録です。

うつ病をテーマにした児文学ーーマリャーナ・レムケ著「母さんがこわれた夏」

近年うつ病という言葉をよく聞くようになりました。
メディアで取り上げられたり、体験談を書いたエッセイが多くの人に読まれ、映画やドラマになっています。
しかし、まだ周囲の理解は乏しいように思えます。
まして、小学生となるとどうでしょうか。
もしお父さんやお母さんが、突然うつ病になってしまったらとまどうかもしれません。
今回ご紹介する作品は、ドイツの児童文学マリャーナ・レムケ著、松永美穂訳「母さんがこわれた夏」(徳間書店)です。
本書は小学校中学年向きに、重いテーマを明るく楽しく読みやすく描かれています。

 

母さんがこわれた夏

 

主人公は10歳の女の子ゾフィー
陽気な父親はタクシードライバー、しっかり者の母親は専業主婦で、ゾフィーには弟二人、妹一人がいます。
その兄弟は四人とも同い年。つまり四つ子であること以外は、ごく普通の家庭です。
毎晩、父親はゾフィーたちに楽しいお話をし、母親に止められるとベッドへ直行します。
ところが、ある日母さんがベッドから起き上がれなくなってしまいます。
その表情はとても悲しげ。ゾフィーはそんな母親を心から心配します。
自分たちが四つ子だから、お母さんの負担になってしまったんじゃないかと思い悩みます。
母親の妹叔母さんは精神科医で、夏の間フィンランドへ静養することを勧めます。
遠出をしたことのないゾフィーたちは、船に乗るのも大はしゃぎ。
そして、フィンランドでは毎日森を散策し、お友達もできます。
お母さんもフィンランドの自然に触れ、少しずつ快復の兆しを見せますが、最後の日に病状が悪化してしまいます。
帰宅して母親から笑顔が消え、家の中が暗く沈み、ゾフィーたち子供は心配します。
学校も始まりそんな母親を一人にはしておけないため、叔母さんの勤めている病院に自ら進んで入院します。
ゾフィーは他の兄弟たち、お父さんと力を合わせて、留守を守ります。

この作品は母親のうつ病を下地とし、子供たちの成長を描いております。
筆者のマリャーナ・レムケ自身もうつ病を発症し、入院した経歴を持っております。
以前よりうつ病をテーマのにした作品を執筆したいと考えていたようです。
また、四つ子にしたのは、孫娘が一人っ子でたくさん兄弟の出てくるお話が読みたいとリクエストがあったそうです。
ドイツの町並みとフィンランドの自然も素晴らしく、物語に彩りを添えてます。
もし身近な人がうつ病にかかってしまったら、最初の入門書としてお子さんと一緒に読んでみてはいかがでしょうか。