ロボットだって青春する?!
読書感想はブクログで簡潔に書こうと思っておりました。
今回、読んだ作品は第1回クランチノベル大賞を受賞した佐久本庸介さんの作品のため、思い切ってこちらで書くことにいたしました。
じつは私もこの大賞を主催したクランチマガジンという投稿サイトは利用しております。右側にリンクも貼ってあるでしょ?
そちらの投稿サイトや、ツイッターでも、佐久本さんにはひっそり(笑)とお世話になっております。そのお礼と、今後の作家としての成長を見守りたいと思いを込めまして僭越ながらレビューを。もしかしたら、書いているうちにネタバレになってしまうかもしれないので、たたんでおきます。
いきなり「System Start;」の文字に面を食らい、「うーん、私には無理か」と後悔。
いや待てよ。ロボット視点だから、起動してるのか、と納得をしながら読み進めた。このロボ君は人を幸せにするため、作り出されたもの。
なんと、立派な志かと感動。
しかし、このロボ君は不完全。ときどき、人間っぽい失敗をして落ち込む。
ん? 落ち込むとは? そもそも、ロボットには感情がないはず。表情も冷たく、話す言葉も限られているはず。
辻褄が合わない。どうして?
そのどうして? が知りたくて、ページを進める。
サッカーも、卓球も、勉強も得意なのに、女の子が苦手。友達との関係がこじれると、逃げ出したくなる。
しかし、最後の最後にあちらこちらの不思議を、きれいに回収されているのでご安心を。
近年、私が好んで読むものは表現力が豊か(主に比喩が抜きん出ている)で、文章リズムがいい作品ばかりだった。
ところが佐久本さんはこりにこった表現も、文章もスマート。却ってストレートに胸を打つ言葉が飛び込んでくるのだ。
本来あるべきの言葉の力を感じ、胸に温かい染みとなって体全体に広がっていく。
まるで何時間も雪の中にいて凍傷すれすれで、家に入ると暖炉に火を入れて待っていてくれた人がいたような感覚だ。
そんな、優しい温もりに包まれた読書体験は初めてだった。
主人公手崎零の年頃は中学生から高校生にかけて。その年齢は自分探し真っ最中のはず。
おそらく多くの同世代は、学校と家庭が主たる生活の場となるだろう。塾やバイトに行っている子もいるだろうが、一日の半分は学校と家庭で過ごしているはずだ。
その狭いコミュニティでたくさんの人と接触し、さまざまな形の愛を知ることになる。
異性との愛はもちろん、友人との愛いわば友愛も。
彼もそのたくさんの人と触れ合い、多くの愛を見つけ、次第に自分と向き合うことになっていく姿が何とも言えず頼もしい。
しかし、ラスト数ページは指が重かった。零くんのバックを知れば知るほど、切ない気持ちになるのだ。
これ以上は作品の肝となる部分なので控えますが、最近気持ちがくさくさしている方、傷ついておられる方は必読です。
読み終えた後、優しい気持ちに包まれること請け合いです。
駄文(いつものことか)にて、失礼いたします。
二三歩拝